eMAXIS Slim 新興国株式の中身は?
新興国株式に投資してみたい、そんな望みをかなえる投資信託がeMAXIS Slim新興国株式です。
皆がオルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)を買っている中、ポツポツ目立つのは『新興国の成長に期待したいから、ちょっぴり新興国のインデックスファンドも宝くじ枠で買っておこう』という人たち。
イメージ的には9割オルカンとかS&P500のインデックスファンドを積み立てていて、1割(数千円~)くらい「eMAXIS Slim新興国株式」を買っている感じです。
『リスクは高いけど、大儲けできるかも!?』というイメージで買っているのではないでしょうか?
では、その中身を見てみましょう。
中国・台湾で半分
『eMAXIS Slim新興国株式』は『MSCIエマージングマーケットインデックス』という、新興国を対象とした指数をベンチマークにする投資信託です。24の国と地域に投資するのですが、グラフの通り、中国と台湾で約半分、そこにインドと韓国を加えると75%近くになります。このため、中国と台湾の企業の業績がもろに影響します。
これを見て言えるのは、地政学的なリスクがべらぼうに高いということです。
もし、噂されている台湾有事(中国が台湾へ武力侵攻)が起これば、どのようなことになるか想像もできません。(株価は上がるかもしれないし、取引停止(凍結)で無価値になるかも)
新興国全体に投資しているつもりになっていても、実際は「中国と台湾が中心」ということをまず理解しておきたいところです。
有名企業+有力銀行が大きな比率を占める
具体的な構成銘柄を確認してみましょう。
1位:TSMC 5.8%
2位:テンセント 4.0%
3位:サムスン電子 3.4%
4位:アリババ 2.3%
5位:リライアンスインダストリーズ 1.3%
どうでしょうか?有名企業ばかりですね。
TSMCは世界一の半導体製造メーカーです。熊本に工場を建設中で日本とも関係が深いですね。
テンセントは世界最大級のゲーム会社でGoogleやAmazon・Microsoftと肩を並べる規模です。
サムスン電子は言わずと知れた世界一の電子製品メーカー、韓国のGDPの2割を占め、企業ブランド力はアジア1位です。
アリババは、アジア最大の電子商取引企業で、リライアンスインダストリーズはエネルギー・小売・デジタルサービスまで手掛けるインド最大のコングロマリット。
そして中国建設銀行やICICI銀行、インドの住宅ローン市場を牛耳るHDFCなどの金融業もトップ10に入っています。
このように各国のトップ企業が集結していることで、その収益性は先進国企業に劣ることはないのではないかと思いますが、『爆発的な成長力があるか?』と言われると、既に巨大企業なので、10倍20倍になるのは難しいのかなとも感じます。
為替の影響を侮るな!
eMAXIS Slim 新興国株式は為替ヘッジをしていません。そのため為替変動の影響を大きく受けますが、それは見慣れたドル円市場ではありません。
〇香港ドル、ニュー台湾ドル、インドルピー、韓国ウォンなどの影響が大きく、全体の半分以上です。(アメリカドルは6.9%しかありません)
ここ5年為替変動を確認すると、
インドルピー
韓国ウォン
為替変動の大きさを感じることができます。これらが複合的に影響するので、10年後どうなっているかを予想することはまず無理です。為替変動の影響が10%、20%とかではなく、50%、100%のオーダーで基準価額に影響を与えるとしても何ら不思議ではありません。
まとめ
eMAXIS Slim新興国株式は、先進国以外の超巨大企業に投資する投資信託である。ということが言えると思います。そのため、『宝くじ枠』というほど、驚異的な成長を期待するのは少し違うのかなと思います。
しかし、新興国が経済発展していく中で、これらの企業がリーダーとなって行くのではないかと思います。その面で先進国を基盤とする他の巨大企業と比較するとアドバンテージがあるのではないかと思います。
リスクとしては、地政学的リスクと為替リスクを十分理解しておくことです。特に中国・台湾が全体の半分を占めるため、両者の関係には常に注意を払う必要があります。
また、為替についてもドル以外の通貨について気を配る必要があるかと思います。
リスクと成長への期待とのバランスを見た時に、ここに大きく投資するのは少し躊躇してしまいます。ただ、投資先の企業は先進国企業に引けを取らない優良企業だと思いますし、先進国の成熟企業よりも成長期待が高いのは確かです。アクセントとして買ってみるのは投資の視野を広めるうえで楽しいかなと感じます。私は月5,000円を積み立てています。
『宝くじ』としてではなく、『対抗枠』として買うのが正しい投資姿勢だと感じました。